アルバイトに行きたくない。僕はもう社会に適応できないのかもしれない。

 アルバイトに行きたくない。もうイヤだ。郵便局(短期)のバイトを辞めたあと、そう思った。しかし金がない。仕方なしに求人誌を見る。いろいろな仕事がある。が、人見知りの僕には、そのどれもが鬼門に見える。したがって、次は「人と接しない」のバイトをしようと思っていたのだが、近所のスーパーに応募すると店長から何故か寿司部門に配属されてしまった。寿司だ。一日、100巻ぐらいの寿司を握り続ける。いまそういうバイトをしているのだが、僕はこの仕事が、本当にツライ。これまでの人生で一番ツライバイトかも知れないと思っている。寿司を握るのはいい。楽しいから。問題なのは、おばちゃんと「二人っきり」。
 これが本当に辛い。「お疲れ様です」と挨拶をする。ハイと答える。仕事を覚える。そして、やがて何か自然に、世間話をしなければならない空気に達し始めると、僕は、必ずこの段階で、大きくつまづく。まずコミュ症だ。この言葉自体は好きじゃないが、僕は社会に出てから、自分がコミュ障だということに気づいた。まずコミュ賞の特徴は、「しゃべりかけられないとしゃべれない」という性質がある。こういうタイプが恐れるのは、ふたりっきりだ。ふたりっきりになると、こんな風になるからだ。

 

 

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 ずっと無言である。

 

 さらに三人になると・・・・・

 

 

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 こんな風になる。なぜだろう。3人以上になると、僕は、必ず、こんな風になる。
 僕は5年間、さまざまなバイトをしてきたが、自慢じゃないが、どのバイト先でも浮いてきた。3人はいいんだ。おばちゃん同士がずっとしゃべってるから。問題は2人である。2人っきりの状況になると「何か喋らなきゃ」とテンパって、頭が真っ白になる時がある。あるとき店長から呼び出された。「ドリーくん」「はい」「もっと明るく・・・な」と、言われた。明るくなと言われても、どうやったら明るくなれるんだろう。明るさが欲しい・・・。
 加えてそのスーパーが、妙に家族的というか、「10年来の付き合い」的な人ばかり揃っていて、おばちゃん同士が抱き合ったり、みんな異様に「仲がいい」のだ。こういう職場は、一人に嫌われたら命取りだ。自分の異物さが異様に際立ってしまう。まわりを見渡す。あの人も、この人も仲がいい。僕は落ち込む。なんでそんな仲いいの? このスーパーの10年来の結束力から生まれた「アウェー」な空気を打破すべく僕は「いい子」を必死に演じているが、あるとき気づいたのである。「いい子」を演じたって好かれるわけじゃないことに。人に、好かれようとするほど距離が生まれているジレンマに僕はいま苦しんでいる。
 外の世界とはまったく縁がなかった僕だが、バイト先にはいろんな人がいた。
 巻き寿司ばかり作る入江さん。何を喋りかけても「OK」しか言わない中国人の「路さん」。どんな世間話をしても「80年代は良かった」みたいな話しかしない山川のおじさん。みんな毎日を「淡々」と生きてるって感じがするんだ・・・。
 なんていうかな。「虚」と「実」が。みんなぴったりなんだよ。僕なんか、ズレまくりで、いつも「あらぬ自分の姿」を夢想しながら生きているのに、そういう人間なんか一人もいやしない。みんな虚と実が、ぴったり。これが「大人」っていうやつなのかな。こういう人たちに囲まれながら僕は寿司を、まいにち握り続けています。
 ニート生活をしてて、ほんとうに忘れていたよ。僕は。働くのがほんとに嫌いなんだ。いや・・・人が嫌いなのかもしれない。ほんと。どうやったら社会性がつくんだろう。社会性が欲しい。アルバイトに行きたくなさすぎて、いま、泣いてます。