文学夜話第7夜 「ぼくのともだち」エマニュエル・ボーヴ

 

朝、寝る前に歯をみがく気力も、ほぼ、ない。自分は、社会で、今、改めて、何の役にも立っていない人間だ。と、思う。将来どうしたらよいのか。よく分からず、本だけは増えてく。そんな生活をしていると、何気なく本に救いを求めて、読んだ。読み出したら止まらない本に出合った。エマニュエル・ボーヴの「ぼくのともだち」だ。

久々に、此の本を、何気なく手に取って読んでみたんだけど、ちょっと自分とシンクロ度が、高すぎて、2,3年、批評する気が起きなかった。まず主人公は、ニートだ。引きこもりであるが、舞台はフランス。色々なことがあって働く意欲がなく、ずっと部屋裏部屋のような場所で、引きこもっている。で、なにをするかといえば、友達作り。今みたいにネットとかないので、一生懸命街へ出て、友達を作ろうとする。理由は、寂しいから。ただそれだけ。高尚な悩みなんてない、只友達、が、欲しい、其処に惹かれた。で、読み進めていくと、段々と、此の主人公は、友達が出来たりするんだ。で、やっと、良い友達ができるんだけど、でも、しばらくすると、主人公の方から、縁を切ってしまう。友達と、わいわいやっていても、あるときすごく冷めてしまう。友達に彼女がいると分かるんだ。急速に、冷めてしまうのだ。あ、すごい嫌、って、で、其れのくりかえし、友達が出来ても、相手が自分より、高いスペックを持っていたりしたら、そそくさと逃げてしまう。で、また孤独なる、のくりかえし、この小説は、すごいのは、なんで此の主人公に友達ができないのか、非常に明確に答えを出してるんですね。なんで友達が出来ないのか。

それは「自分より下」を探してるからだって。自分より下、下、下、を探しているから、いつまでたっても、友達が出来ない。何故「下」を探すと、友達が出来ないか。つまりこういうことだ。私たちは自分の事を”弱い”人間だと思っている、で、自分と同じ”弱さ”を抱えた人たちと安心して、つながろうとする、そして一瞬、つながりかける、でもやがてしばらくすると、途端に、つながりがばらけて、結局、ひとりぼっちになってしまう。何故か。

「弱いこと」が媒介になり、人と人とつながった関係というのは、片方が、或る瞬間に「強さ」を見せると、途端に、破綻し、バラバラになってしまうのだと。

だから「弱い者」の連帯なんてのは、未来永劫成立しえないのだ、

そういうザンコクな喪男の現実を、教えてくれる、”ぼくのともだち”は、今でも私のマスターピースでありつづけているのである。いやこれはマジで、メンタルこたえるけど、読まなアカン不朽の名作だと思う。