ネット界激震「ケーキを切れない非行少年たち」を語る。

 

  先日、ネット上で話題の本「ケーキを切れない非行少年たち」を、読んで驚いた。売れている本らしく、読んだのだが、これは衝撃的な本だ。読んだ瞬間、常識が壊れる感覚に襲われ、変な感動が湧いてきた。というわけで、今日はこの本を紹介したいと思います。

 どういう本かと言うと。宮口さんって人が、少年犯罪の実情を訴える本なんやな。で、この人は、ずっと問題のある子供と長年接してきた、少年犯罪のエキスパートなわけ。

 で、その人が、子供を接してきて「ある共通点」が分かって来たって言うねん。この宮口さんの働く少年院は、普通の少年院とはぜんぜんレベルが違っていて、一度、暴れたら、3人がかりで抑えないと手が付けられない、そのぐらい凶暴な子供たちが沢山いて、そんな子供達を必死になって更生させようとするんやけど、だんだん子供と接するうちに、ある共通点が有ることが分かってくんねん。宮口さんが言うには、どうも彼らには、世界が全て歪んで見えている。と言う事が分かってくる。

 例えば、九州を指さしても、彼らは、中国?と答える。基礎的な地理が分からない。そのうえ漢字も読めなければ掛け算もできない。さらに衝撃的なのは、彼らは、「ケーキが切れない」やんって、例えば、3等分にケーキを切れ。と言われても、何故か、四等分に切ったり、5等分に切ったりする。ケーキを切る事すらできない。で、さらに衝撃的なのが、どうも彼らは「時間の感覚が歪んでいる」という事が分かってくる。

例えば、普通の人は「明後日、来月、来年」は理解できる、だが彼らは「明後日、来月、来年」が理解できない。時間の感覚がないため他人の人生の軌跡を想像できないから他人の「もの」を奪う事に全く罪悪感を感じないんやって。

 で、宮口さんは、この問題の全てはIQが原因であると結論付ける。フツーの生活を送るには、IQが100ないと日常に支障をきたすらしい。その下のIQ70~84の人達は、福祉の対象にならないと言う(IQが70以下が、知的障害だと言われている)。宮口さんは、犯罪者になってしまう子供はこのIQ70~84の子供が圧倒的に多いという事、を指摘する。宮口さんは、福祉制度や、社会の理解に拒まれてきた為に、このIQの人々が普通の人から犯罪者に変えられている現実を本の中で訴える。そこで凶悪な犯罪を未然に防ぐために、社会制度の充実させ(IQ70~84の人々)を救えと言う本が、この「ケーキを切れない子供たち」って本なわけや。

 実は、これと全く同じテーマを、書いている人が、山本譲二って人なんや。

 この人は、汚職の不正で、刑務所に入った人なんやけど、刑務所に入ったら、ビックリすんねん。刑務所に入ったら、大便を燃やす人や、奇声をあげる人、知的レベルが10歳で止まっている障碍者の人が沢山いて、そういう人々が、刑務所に服役していることに衝撃を受けんねん。

 で、彼らは一日中何をするかと言うと、刑務所で、ずっとロープの紐を解いてるんやて。何してるんやと思う? 山本さんは、最初はスーパーの荷下ろし業務に使うのかな思ってたんやけど、ぜんぜん違うねん。実は、このロープ作業、障碍者だから、生産的な業務(複雑な業務)ができないので、ただ「時間を潰している」だけやねん。一日中、時間潰してるんやって。紐遊びで。その光景に山本さんは衝撃を受ける。

で、障碍者の人々は、介護疲れで殺人を犯した受刑囚とか、不幸にも福祉の恩恵を受けられず刑務所に入ってしまった人ばかりやねん。そういう人たちが刑務所で働いても、無一文で社会に出る事になり、再犯を重ねる。

 山本さんは、次の本で、レッサーパンダ事件を語る。レッサーパンダ事件って言うのは、レッサーパンダの帽子をかぶった男が、女性を殺した事件なんやけど、この事件は始め大々的に報道された後、急に、報道が止んでまうねんて。なんでかっていうと、実は、犯人に、知的障害があることが分かったからなんやて、しかもこの犯人は、知的障害がありながら、福祉制度の恩恵を、全く受けてこなかった人やったんやて、さらに父親から壮絶な虐待を受けていて、学校では、いじめを受け、家に帰れば、父親からは虐待され、対人関係の築き方も教えられず、通りがかった女性を、殺してしまう。山本譲二さんは、この事件の犯人は、社会的な福祉制度の恩恵を受けていれば、殺人者になっていなかったんじゃないかと訴える。

 このレッサーパンダ事件には後日談がある。このレッサーパンダ事件の犯人を虐待してたお父さん。あとで分かったんやけど、

 このお父さんも障害者やってん。

 このお父さんも福祉制度の援助を全く受けていない人やったんやて。

 怠けるな。どうして普通の事ができないのか。と彼らは言われ続けている。対人関係を築くキッカケを得ることなく、やがて負の念は、社会への報復観、殺す動機へと変わっていく。「一人死ね」が間違っているとワシが思うのはまさにこういう所以である。社会の役割は、殺さない動機を作る事なのに、「一人で死ね」は、殺す動機を、一つ作っているだけなのだ。

 、「ケーキを切れない非行少年たち」は、これからの社会を出ていこうとする人には今年一押しの新書なので、胸を張ってオススメしたい。読めば確実に世界観が変わるので、ぜひ山本譲二の著作と併せて読んでみて欲しい。 

 

 

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

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累犯障害者 (新潮文庫)

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獄窓記 (新潮文庫)

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